JPYCが週−9.75% — 消えた4億円は、どこへ向かったか
9月25日終値でJPYCは38.66億円。前週から4億1,776万円(−9.75%)減り、7日連続で残高が縮み続けました。 先週号で書いた+52%の急増は韓国Upbit上場がきっかけでしたが、 その反動が今週の主役です。 減少はEthereum一極集中だった先週の増加とは対照的に、Polygon・Ethereum・Kaiaの3チェーンに分散しています。 一方Kaiaでは9月25日の1日だけでホルダー数が5,678人から14,239人へ急増し、 原因は本号執筆時点では特定できていません。 JPYSCは発行3,307万円/償還2,981万円で、往復額の縮小がさらに進みました。
対象期間は2026年9月19日(金)終値 → 9月25日(金)終値。 残高はKV history:days、チェーン別の内訳はjpyc:dataの日次発行・償還額を使っています。 JPYSCのホルダー数(2)は残高が0より大きいアドレスのみを数える当サイト独自の定義で、 Nodit集計上のカウント(過去に残高ゼロになったアドレスを含む)とは異なります。
先週は「Upbit上場で+52%」という増加の週でした。 今週はその裏返しで、7日間ノンストップの減少です。 増えたときはEthereum1本が主役でしたが、 減るときは複数のチェーンに分かれています。 同じ現象(上場後の価格乖離)の膨張と収縮を、チェーン別のデータで並べて見ると何が見えるのか。 それが今週の問いです。
今週の1枚
※ 金の点は9/18のピーク(44.37億円)。そこから7日連続で下落しています
9月17日夕方のUpbit上場を境に、JPYCの終値は翌9月18日に44.37億円まで跳ねました。 そこがこの2週間の頂点です。 9月19日から9月25日まで、JPYCは7日連続で前日を下回り、 最終的に38.66億円まで戻っています。 ピークからの下げ幅は5億7,100万円で、率にして12.9%です。
今週の数字9/19終値 → 9/25終値
※ 9月18日は改定後の44.37億円で表示。当サイトの記録上、これまでで最も高い週足です
合算は243.16億円 → 239.02億円。4億1,449万円のマイナスで、率にして−1.70%です。 JPYSCはほぼ動いていないため、今週の合算を動かしたのはほぼ全額がJPYC側の減少です。 ホルダー数はJPYC全体で73,092 → 82,230(+9,138)と大きく増えていますが、 これは主にKaiaで起きた1日限りの出来事によるもので、詳しくは後述します。
JPYCの逆流 — チェーン別に見る7日連続の減少
※ 4チェーンすべてがマイナス。先週はEthereumだけがプラスで他3チェーンの合計はマイナスでした
①要約 — 先週号では「増えたのはEthereum一本」と書きました。 今週はその裏返しで、4チェーンすべてがマイナスです。 最も減ったのはPolygonで−2億947万円、次いでEthereumが−1億3,114万円、Kaiaが−7,508万円、Avalancheが−207万円。
②重要ポイント — 発行と償還の内訳で見ると、 Polygonは発行1億6,327万円に対し償還3億7,275万円(償還が発行の2.3倍)、 Ethereumは発行8,570万円に対し償還2億1,683万円(2.5倍)、 Kaiaは発行534万円に対し償還8,042万円(15.1倍)。3チェーンとも発行より償還が大幅に上回っています。
③読みどころ — 外部メディアの報道によれば、 Upbitは9月17日18時の上場当初はEthereumの入金しか受け付けておらず、同日19時23分からKaia・Polygonのネットワークでも入金を受け付け始めたとされています(JinaCoin)。 この経緯は当サイトの前号・前々号では扱っていない新しい情報です。 つまり上場直後の3〜4日間で、Ethereum・Kaia・Polygonの3チェーンから外部にあったJPYCがUpbitへ流れ込んだ構図です。 今週の3チェーンの償還超過は、その巻き戻し——価格差を利用した裁定と見るのが自然です。 一方でJPYC全体の保有集中度(上位1アドレスのシェア)はこの1週間40〜42%の範囲でほぼ一定でした。 単一の大口が動いたのではなく、複数の参加者による分散した動きだったとみられます。
④示唆 — 利用者にとっては、 上場直後に理論値の4.2倍まで開いた価格差は、1週間強かけてチェーン上のデータに現れる形で解消に向かっています。 事業者にとっては、 単一の取引所上場イベントで複数チェーンの供給が同時に動くという事実は、 今後同種のイベントが起きた際の在庫設計(どのチェーンにどれだけ準備するか)の参考材料になりそうです。
Kaiaの謎 — 1日でホルダーが2.5倍になった
※ 6日間5,675〜5,678人で横ばい、9月25日だけ14,239人
①要約 — 9月25日、KaiaチェーンのJPYCホルダー数が5,678人から14,239人へ、1日で8,562人増えました。 これはJPYC全体の週間ホルダー増加(+9,138人)の94%を占めます。
②重要ポイント — 同日のKaiaの送金件数は9,671件で、 9/19〜9/24の6日間の平均(約1,590件)の6倍超。 アクティブアドレス数も8,879と、平常(6日間平均357)の約25倍でした。 一方でこの日のKaiaの移動総額は3,150万円で、前日(4,116万円)より少なく、 Kaiaチェーン全体としてはこの週を通じて−7,508万円の償還超過です。 つまり残高は減っているのに、保有者だけが急増した週でした。
③読みどころ — 9,671件で3,150万円という数字を割ると、 1件あたりの平均送金額は約3,257円。 少額を数千件単位で一斉に配る動きに典型的な規模感です。 当サイトは7月にも同種の現象(LINE Unifiの「ラッキーボール」当選金の一斉付与)を確認しています。 時期的には、8月1日から9月1日8時59分まで実施されていた「JPYC友だち紹介イベント第2弾」の 当選・報酬付与が、締切から3週間超を経て9月25日にまとめて行われた可能性があります。
④示唆 — もしこれが既存キャンペーンの後処理だとすれば、 ホルダー数の増加は新規需要の証拠ではなく、8月のイベントの精算にすぎないことになります。 次号までにこの14,239人という水準が高止まりするか、再び5千人台へ剥落するかが、 実需かどうかを見分ける材料になりそうです。
JPYSC — 往復はさらに縮み、償還の時刻はさらに後ろへ
※ 8月は毎週6億円前後の往復でしたが、9月に入って急減し、今週さらに縮みました
JPYSCは+326万7,700円(+0.02%)。残高は200.35億円で、ほぼ横ばいです。 木曜9/24の1回で3,307万円を発行し、金曜9/25の12時08分に2,981万円を償還。 発行・償還とも先週(0.36億円/0.38億円)からさらに小さくなり、往復の規模は7週間で最小です。
当サイトは以前、JPYSCの金曜償還は「10時54分〜11時59分の65分間に収まる」と書きました。 しかし直近の実測では、7/24の11:14を起点に 8/21は14:41、8/28は12:45、9/4は12:22、9/11は14:02、9/18は13:36、そして今回9/25は12:08と、この10週で徐々に午後へ後ろ倒しになっています。 初期の「狭い時間帯」という説明は、もはや直近の実態には当てはまりません。
世界の中の円
※ 円=JPYC+JPYSCの9/25終値を1ドル158.69円で換算。他通貨はDefiLlama由来
円建ては$1.51億で非ドル圏2位を維持しました。 JPYCの減少を反映してドル建て規模も前号時点からわずかに縮んでいますが、 非ドル圏の順位そのものは変わっていません。 ユーロ圏は$9.15億で、円との差は約6.1倍。 3位以下はスイスフラン$53M・英ポンド$39M・豪ドル$11M・シンガポールドル$10M。 世界全体は$3,143億で、前月比+0.91%です。
そのほか、今週押さえておく動き9/19 → 9/25
米連邦準備制度理事会(FRB)は、GENIUS法の実装に向けた2本の規則案への意見公募を開始したと発表しました。 1本目はFRB監督下のステーブルコイン発行体向けで、 準備資産を短期国債など高品質の流動資産で全額裏付けることと、 信用・運用リスクに対応する標準化された自己資本規制を課す内容です。 2本目は銀行の子会社がステーブルコインを発行する際の申請手続きを定めるもので、 報道によれば審査期間は最長120日、最初の3年間の最低資本金は500万ドルとされています。 意見公募期間は連邦官報への掲載から60日間。 国内の3メガバンク共同発行や信託型ステーブルコインの議論とは制度設計が異なりますが、「銀行が発行体になる」という同じ方向性の規制が米国でも具体化し始めた点は共通しています。発表
日本ブロックチェーン基盤は、準備中の信託型日本円建てステーブルコイン「EJPY」を軸に、 事業会社・金融機関・自治体とユースケースを共同検討するプログラム「ステーブルコイン実証実験パートナーズ」を開始したと発表しました。 募集開始時点ですでに26社・団体が参加を表明しており、 公表分だけで東芝・SCSK・朝日放送グループホールディングス・地方銀行の八十二長野銀行・福岡県田川市など16社。 期間は2026年9月から2027年2月までの約半年、参加費は無料です。 JPYC・JPYSCに続く新しい円建てステーブルコイン構想が、 具体的な参加企業を伴って動き出したことを示す発表です。発表
今週言えること、まだ言えないこと
・JPYCは7日連続で減少し、週間で9.75%(4億1,776万円)減った。減少はPolygon・Ethereum・Kaiaの3チェーンに分散しており、単一チェーンの現象ではない。
・JPYSCは発行3,307万円/償還2,981万円で、往復の規模は当サイトの記録上最小。8月28日の週をピークに縮小基調が続いている。一方で金曜償還の時刻は、当初の「10:54〜11:59」という狭い窓から徐々に午後へ後ろ倒しになっている。
・円建ての非ドル圏順位は2位を維持しているが、今週はJPYCの減少を受けてドル建て規模もわずかに縮んだ。
・Kaiaのホルダー急増(+8,562人)が具体的に何によるものかは特定できていない。
・JPYCの取引所価格がいつ1円へ完全に収束したかは、当サイトが価格データを持たないため確認できない。残高の動きからの推定にとどまる。
・今週の供給減少が「上場前の水準への裁定的な巻き戻し」なのか、それ以外の需要要因を含むのかは、送金先アドレスの属性まで見なければ厳密には切り分けられない。
総括:急騰の代償は、単一チェーンではなく複数チェーンに分散して現れた。先週号ではEthereum1チェーンだけがJPYCの増加を作っていると書きました。 今週はその裏返しを追ったところ、減少はPolygon・Ethereum・Kaiaの3チェーンに分かれています。 これは、上場イベントが単一チェーンで完結する現象ではなく、複数チェーンをまたいで供給が動く構造的なイベントだったことを示しています。 一方でKaiaのホルダー急増という別の謎も同時に発生しており、 この週はひとつの物語では説明しきれない、複数の動きが重なった週でした。
本号の数値は当サイトのオンチェーン日次記録(集計期間 2026年9月19日終値〜9月25日終値)に基づきます。JPYSCの9月25日の発行残高20,035,378,703円はKVの日次記録と一致しており、JPYCのチェーン別純増減の合計(マイナス4億1,776万円、集計期間9月20日〜9月25日)は残高差分と完全に一致することを確認しています。9月18日の終値は先週号(#010)公開時点の29.41億円から44.37億円へ改定されています(本文内の注記を参照)。世界の非ドル圏比較の円換算には2026年9月25日時点のUSD/JPYレート(158.69円)を使用しています。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。